高濃度ビタミンC点滴と乳癌について

癌患者における高濃度ビタミンC治療が再注目を浴びています。

超一流科学誌であるNature Review Cancerにおいても高濃度ビタミンC治療についての総説が発表されています。

Nat Rev Cancer. 2019 May;19(5):271-282. doi: 10.1038/s41568-019-0135-7. Targeting cancer vulnerabilities with high-dose vitamin C Bryan Ngo, Justin M Van Riper, Lewis C Cantley, Jihye Yun

血中ビタミンC濃度を点滴によって一定以上に上昇させることで、過酸化水素を生成、正常細胞に影響を与えずにがん細胞の核を濃縮することでがん細胞の死を誘導する治療法です。アメリカの国立衛生研究所(NIH)、 国立がんセンター(NCI)、 食品薬品局(FDA)の研究者が共同で高濃度ビタミンC点滴療法ががん治療法としての可能性があることをアメリカ科学アカデミー紀要(PNAS)に発表しています。各種の癌における高濃度ビタミンC治療の臨床研究も世界中で行われており、結果の報告が期待されます。

<高濃度ビタミンC点滴と乳癌についての研究について>

2020年に発表されたイタリアからの総説(review)を要約してみます。

*総説:これまでの論文(基礎研究、臨床研究、症例報告など)をまとめたもの

乳癌に対して高濃度ビタミンC点滴がどのようなメカニズムで効果があるのかをまとめています。

Review

Why Vitamin C Could Be an Excellent Complementary Remedy to Conventional Therapies for Breast Cancer?

Int J Mol Sci. 2020 Nov 9;21(21):8397. doi: 10.3390/ijms21218397.

Michela Codini

乳癌は、世界で年間2億人以上の方が発症し、女性のがん関連死の原因の第一位です。乳癌の発症原因は、遺伝子異常、ホルモン異常、家族性があります。

ビタミンCは、水溶性ビタミンの一つです。人間は、ブドウ糖からビタミンCの合成に必要な酵素がなくビタミンCを合成できないため、食事からビタミンCを摂取しなければなりません。ビタミンCの化学名は、アスコルビン酸で、生体内では通常還元型のL-アスコルビン酸または酸化型のL-デヒドロアスコルビン酸の形で存在しています。

ビタミンCは強力な抗炎症作用と免疫系を活性化し、腫瘍の増殖、血管新生、転移、治療への抵抗性を抑制と報告されています。

腫瘍血管新生、癌の転移活性、および癌細胞増殖に影響を与える因子のひとつが低酸素微小環境です。腫瘍内の低酸素症の原因となるHIF-1は、ビタミンCの抗腫瘍作用の標的です。HIF-1は、癌患者の主な死因である癌細胞の転移を調節していますが、ビタミンCは、HIF-1の分解に必要な因子であり、ビタミンCが癌細胞の転移を抑制していると考えられます。

また、ビタミンCはTET酵素の活性を調節しています。TETは細胞を再プログラムし、細胞の成長を制御するために生理学的に重要な因子です。 乳癌ではTET酵素のレベル、特にTET1のレベルが大幅に低下していることが報告され、乳癌の腫瘍形成にTET1が関連していることが報告されています。TET1が乳癌細胞の進行を阻害するのに対し、乳癌患者におけるTET1の発現低下は生存率の低下と相関することも報告されています。

癌転移の発症を抑制する上でのビタミンCの重要な役割は、コラーゲンの合成です。ビタミンCが不足するとコラーゲンの合成が減少します。腫瘍を取り巻く高密度のコラーゲン線維性組織が腫瘍細胞の拡散に対する物理的障壁、局所浸潤に対する細胞間基底物質の耐性を高めています。したがって、転移の進行を抑制するためにビタミンCを使用することにより、コラーゲンの合成を適切なレベルに維持することが重要です。

いくつかの論文が、乳癌患者へのビタミンCの効果を報告しています。乳癌患者に対して、ビタミンC治療は痛みの軽減、QOLの増加、食欲増加に効果的であると報告されています。さらに、一部の乳癌患者では高濃度ビタミンC点滴により生存期間を延長し、化学療法や放射線治療の関連性のある副作用の1つである酸化ストレスを減らすことによって抗腫瘍効果をもたらすと報告されています。実際、放射線療法および化学療法によって酸化ストレスを誘発するROSのレベルが癌細胞内で増加します。病期が進行した乳癌患者はビタミンCの濃度が低いのに対し、病期が早期なほど、ビタミンCの濃度が高いと報告されています。乳癌患者に対する高濃度ビタミンC点滴の効果を評価するために実施された臨床試験では、問題となる副作用の報告はされませんでした。そして、高濃度ビタミンC点滴は、免疫系を改善しQOLが向上したと報告されています。

乳癌患者のビタミンCと生存率に関するメタアナリシス研究では、乳癌と診断後のビタミンCによる治療が死亡リスクの低下に関連している可能性があると結論付けています。 ビタミンCの投与は、特に乳癌によって引き起こされる死亡を含む、死亡のリスクを大幅に減らすことが期待できます。

乳癌患者に対する高濃度ビタミンC点滴には多くの利点があり、標準治療に追加する治療法としては理想的であると考えられます。 癌患者のビタミンC濃度は低下しており、高濃度ビタミンC点滴は生理学的濃度を回復するための効率的です。さらに、高濃度ビタミンC点滴は癌患者のQOL(生活の質)を改善することが示されています。 実際、前臨床試験と臨床試験の両方で、高濃度ビタミンC点滴は、抗酸化作用と抗炎症作用により、抗癌作用を妨げることなく、化学療法剤の副作用を軽減できることが示されています。

以上、上記の総説をまとめてみました。各文章の引用論文は原著を参照ください。

ビタミンCによる抗腫瘍効果のメカニズム

二宮医院では、ビタミンCによる抗癌作用に注目し、高濃度ビタミンC点滴自由診療(保険外診療)にて行っています。

詳細は、こちら

・適応疾患

全てのがん:

胃がん・大腸がん・直腸がん・肝臓がん・膵臓がん・腎臓がん・肺がん・脳腫瘍・前立腺がん・乳がん・子宮がん・卵巣がん・膀胱がん・白血病・多発性骨髄腫・悪性リンパ腫 など

・がんの手術をされる方で、手術まで待機されている間と術後の再発予防の目的

・抗癌剤や放射線治療との併用による抗腫瘍効果の増強、副作用の軽減の目的

・標準治療が適応とならない方(効果が減弱、副作用のため、合併症のためなど)

*癌の治療は手術、抗癌剤、放射線療法など既に治療効果が証明されている標準的な治療法が多くあります。「高濃度ビタミンC点滴療法」は代替医療のひとつであり、このような既に効果が認められている標準的治療法よりも優先するものではありません。

・次のような方にお勧めします

・がんの手術を待機中の方

・がんの手術後に再発を予防したい方

・抗癌剤や放射線治療と併用して受けたい方

・抗癌剤の副作用がつらい方

・がんや病気を予防して、健康で美しい人生を送りたい方

・ご家族にがんにかかった人がいる方や年齢的にがんが心配な方