スクリーニング大腸内視鏡検査は大腸癌のリスクを減らすか
大腸がん検診として各務原市では便潜血検査2回法が用いられています。
対象 各務原市に住民登録がある40歳以上(年度末年齢)の方
実施期間 令和4年6月1日~令和5年2月28日
受診方法 健康保険証または運転免許証などの本人確認できる書類と健康手帳(お持ちの方のみ)を持参し、指定医療機関の窓口へ
(注)年1回の受診です
診査内容 問診・便潜血検査(2日間分)
1回でも陽性の結果が出た場合、大腸精密検査として大腸カメラを必ず受けてください。
この大腸カメラを大腸癌検診として使用した場合の有用性を評価した臨床試験の結果が、超一流医学誌NEJMに報告されました。
Effect of Colonoscopy Screening on Risks of Colorectal Cancer and Related Death
DOI: 10.1056/NEJMoa2208375
ポーランド、ノルウェー、スウェーデン、オランダの55歳から64歳の男女を対象とした臨床試験です。これまで一度も大腸カメラをうけていない人達(84585人)を、①大腸カメラを受けて経過をみる人達(28220人)、②大腸カメラを受けずに経過をみる人達(56365人)に分けました。
①の人達がうけた初めての大腸カメラで、62人に大腸癌が見つかり、3634人に大腸ポリープが見つかりました。
*無症状の55~64歳の0.5%に大腸癌、30.7%に大腸ポリープが見つかった。
発見した大腸ポリープはすべて切除されました。
その後10年、①と②のグループを追跡調査しました。
その結果、10年間で①のグループの人達では259人(0.98%)に大腸癌が発見されたのに対して、②のグループの人達では622人(1.2%)に大腸癌が発見されました。
また大腸癌に関連する死亡は、10年間で①のグループの人達では72人(0.28%)に対して、②のグループの人達では157人(0.31%)でした。
この結果を元に、全員が大腸カメラをスクリーニングとして初めに受けたと仮定した解析を行うと、10年間での大腸癌発見のリスクは1.22%から0.84%に減少し、大腸癌関連死は0.3%から0.15%に減少する結果になったとのことです。
*55~64歳で大腸カメラスクリーニング検査を受けると大腸癌リスクが70%に減少し、大腸癌関連死リスクが半分になる。
この報告は、ヨーロッパでの臨床試験の結果であり、日本人にはそのまますべては当てはまらないですが、やはり予想どおり大腸カメラスクリーニング検査をうけることで、無症状の大腸癌を早期に発見治療でき、さらに無症状の大腸ポリープを30%もの人に発見、切除することでその後の大腸癌発生リスク、大腸癌関連死のリスクを減少させることが分かった試験結果でした。死亡リスクは半減することが予想されました。
大腸カメラを大腸がん検診として導入するには、施設、マンパワーなど現実的には困難が予想されますが、スクリーニング検査として大腸カメラをうけ、見つかった大腸ポリープを切除することの有用性を示しています。
この試験は、2009年から始まっており、現在はより大腸癌の発生が増加している可能性があります。
日本人でも大腸癌は増加傾向ですので、大腸癌のリスクを減らすには大腸カメラを受けることには間違いないでしょう。実際、私も40歳で大腸カメラを受けました。幸いポリープもなかったので、次回は50歳で受ける予定にしています。
もちろん、大腸癌の発生リスクである喫煙、飲酒、肥満、加工肉を避けることも重要です。つまり環境因子も重要ですので、近親者に大腸癌の方がみえる場合は大腸カメラを受けることをおすすめします。
といっても、大腸カメラをうけるには抵抗があり、勇気がいりますよね。
①大腸の中をきれいにする下剤を飲むための専用個室(テレビ付き)、専用トイレをご用意しています。
②原則、1日1名の大腸カメラ検査体制です。
③土曜日も検査可能です。
④鎮静剤を使用し眠って検査を受けていただけます。
⑤痛みが少なくなるように細いスコープと炭酸ガスを使用しています。
⑥検査当日に日帰り大腸ポリープ切除術を受けられます。
⑦検査後は暖かいお茶でリラックスしてお帰りください。
最近は、大腸カメラを受ける女性患者さんの比率が増えてきた気がします。二宮医院では、どなたでも安心して大腸カメラを受けていただけるように心がけていきます。大腸癌、大腸ポリープの早期発見・早期治療で大腸癌関連死ゼロを目指して。