高濃度ビタミンC点滴
高濃度ビタミンC点滴(がん治療)
概要
ビタミンCは、水溶性ビタミンの一つです。人は、ブドウ糖からビタミンCの合成に必要な酵素がなくビタミンCを合成できないため、食事からビタミンCを摂取しなければなりません。ビタミンCの化学名は、アスコルビン酸で、生体内では通常還元型のL-アスコルビン酸または酸化型のL-デヒドロアスコルビン酸の形で存在しています。アスコルビン酸は、骨や腱などの結合タンパク質であるコラーゲンの生成に必須の化合物です。最近はビタミンCの抗酸化作用が注目され、毛細血管・歯・軟骨などを正常に保つ働き、皮膚のメラニン色素の生成を抑え日焼けを防ぐ作用、ストレスやかぜなどの病気に対する抵抗力を強める働き、がんや動脈硬化の予防、老化防止にビタミンCが有効であることが期待されています。
当院では、ビタミンCによる抗がん作用に注目し、高濃度ビタミンC点滴を自由診療(保険外診療)にて行っています。
血中ビタミンC濃度を点滴によって一定以上に上昇させることで、過酸化水素を生成、正常細胞に影響を与えずにがん細胞の核を濃縮することでがん細胞の死を誘導する治療法です。アメリカの国立衛生研究所(NIH)、 国立がんセンター(NCI)、 食品薬品局(FDA)の研究者が共同で高濃度ビタミンC点滴療法ががん治療法としての可能性があることをアメリカ科学アカデミー紀要(PNAS)に発表しています。
Pharmacologic ascorbic acid concentrations selectively kill cancer cells: action as a pro-drug to deliver hydrogen peroxide to tissues.
Proc Natl Acad Sci USA.2005;102(38):13604-9
Ascorbate in pharmacologic concentrations selectively generates ascorbate radical and hydrogen peroxide in extracellular fluid in vivo.
Proc Natl Acad Sci USA 2007:104 (21): 8749-8754.
また、日本国内の研究において、悪性中皮腫の細胞株および担癌マウスの実験で高濃度のビタミンCが悪性中皮腫に細胞死を誘導することを東京大学、愛媛大学、愛知がんセンター研究所の共同研究グループが2010年に発表し、国内でも高濃度ビタミンC治療が注目されています。
High dose of ascorbic acid induces cell death in mesothelioma cells.
Biochem Biophys Res Commun. 2010;394(2):249-53.
さらに、2017年に超一流研究誌であるNatureやCellに、ビタミンCは造血幹細胞内に蓄積し、TET機能を促進し、造血幹細胞としての機能を制限し、白血病の発生を抑制することが報告されています。マウスの実験では大量のビタミンC投与によって、TET2遺伝子の機能が回復し、白血病の進行を抑制し、またヒト白血病細胞株へ高用量ビタミンCを投与するとDNAの脱メチル化とTET2遺伝子の正常化が観察されたと報告されています。
Ascorbate regulates haematopoietic stem cell function and leukaemogenesis
Nature (2017) doi:10.1038/nature23876
Restoration of TET2 Function Blocks Aberrant Self-Renewal and Leukemia Progression
Cell.2017.07.032
高濃度ビタミンC点滴療法は、各種のがんにおいてその効果や副作用の少なさが注目されています。直接的な抗がん作用、抗酸化作用、抗炎症作用、免疫力を高める作用が期待されています。そのため、がん患者の痛み、倦怠感、食欲低下、不眠などの症状を改善し、QOL(生活の質)を維持・改善し、副作用がほとんどないがんの治療法として注目され、米国・カナダ・日本など世界中で臨床試験が現在行われています。
適応疾患
全てのがん
胃がん・大腸がん・直腸がん・肝臓がん・膵臓がん・腎臓がん・肺がん・脳腫瘍・前立腺がん・乳がん・子宮がん・卵巣がん・膀胱がん・白血病・多発性骨髄腫・悪性リンパ腫 など
- がんの手術をされる方で、手術まで待機されている間と術後の再発予防の目的
- 抗癌剤や放射線治療との併用による抗腫瘍効果の増強、副作用の軽減の目的
- 標準治療が適応とならない方(効果が減弱、副作用のため、合併症のためなど)
※癌の治療は手術、抗癌剤、放射線療法など既に治療効果が証明されている標準的な治療法が多くあります。「高濃度ビタミンC点滴療法」は代替医療のひとつであり、このような既に効果が認められている標準的治療法よりも優先するものではありません。
次のような方におすすめします
- がんの手術を待機中の方
- がんの手術後に再発を予防したい方
- 抗癌剤や放射線治療と併用して受けたい方
- 抗癌剤の副作用がつらい方
- がんや病気を予防して、健康で美しい人生を送りたい方
- ご家族にがんにかかった人がいる方や年齢的にがんが心配な方
高濃度ビタミンC点滴(エイジングケア)
概要
高濃度ビタミンC点滴療法は、がんの先進治療としてアメリカを始め世界中で研究・実践されている最先端の治療法です。この点滴療法に美肌や疲労回復、健康維持などの効果があることから、エイジングケア分野でも広く使用されるようになりました。
内服サプリメントとしてビタミンCは通常1g程度ですが、高濃度ビタミンC点滴はその10倍以上の高濃度のビタミンCを点滴することで、ビタミンCの抗酸化作用、エイジングケア効果を全身の細胞に届かせます。酸化による活性酸素などの物質が細胞の老化を進めます。ビタミンCが持つ抗酸化作用で、年齢やストレスからくるお肌の酸化を防ぎ、くすみやシミの改善を行います。また、ビタミンCはコラーゲンの生成に必要な物質であり、お肌のハリや潤いにも効果が期待されます。ビタミンCによる免疫力向上は、風邪や胃腸炎、インフルエンザなどのウィルス感染予防、さらには新型コロナウィルス感染の予防や治療にも実際に海外では高濃度ビタミンC点滴が使用されています。
次のような方におすすめします
- がんや病気を予防して、健康で美しい人生を送りたい方
- 美肌や体調の改善などエイジングケアに興味のある方
- シミやくすみが気になる方
- 疲れが取れにくい方
- 風邪をひきやすい方
- 日々の体調管理が必要な方
点滴方法・回数・費用・治療の流れ
点滴方法
当院では、ビタミンC点滴によるがん治療を確立したことで有名な米国のリオルダンクリニックが制定した「高濃度ビタミンC点滴療法の標準的プログラム (Riordan IVC Protocol)」を元に、点滴療法研究会が日本向けに最適化したプロトコルを使用しています。
高濃度ビタミンC点滴(IVC)療法の開始手順
- 医師から本治療法についての説明を行い、同意書に署名いただきます。
- G6PD活性測定・腎機能・肝機能の採血を行います。
※G6PD欠損(低下)症の方は、高濃度ビタミンC点滴を受けることができません(溶血クリーゼを起こすため)。
採血結果で腎機能・肝機能に問題がない、G6PD欠損症がないことが確認されましたら、ビタミンC点滴を開始します。通常G6PD活性の結果は1週間後に出ます。 - がん治療の場合:12.5g,25g,50gとビタミンCを増量していきます。通常、週2回の点滴を行います。 点滴時間:12.5g 30分 / 25g 50分 / 50g 75分
- エイジングケアの場合:25gのビタミンCを点滴していきます。点滴時間は約60分です。
当院で使用するビタミンC
①アイルランド製のビタミンC製剤
国産のビタミンC製剤は1瓶が2gのものが最大となっており、1瓶ずつ防腐剤が添付されているため、25gの高濃度ビタミンC点滴には防腐剤の量が多くなるため使用できません。そのため、当院では1瓶に25gのビタミンCが含まれた、防腐剤が添付されていないアイルランド製のビタミンC製剤を厳格な基準のもとに海外から輸入しています。
②海外から冷蔵輸送
還元型ビタミンC(アスコルビン酸)は水溶性の状態で常温保存されていると不安定になり、酸化型ビタミンC(デヒドロ・アスコルビン酸)へ容易に酸化してしまいます。酸化型ビタミンCの効果はビタミンCより非常に弱く、かつ抗がん剤の効果を減弱させることがあります(Cancer Res 2008;68:8031)。そのため、輸送中および保管中、常に冷蔵保存が必要です。当院では、点滴療法研究会を通してUSP(米国薬局方)基準に沿った品質が管理されたマイラン社のビタミンC製剤を使用しています。
点滴回数
がん治療前の方 | 週2回の50g高濃度ビタミンC点滴 |
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がん治療中の方 | 最初の6か月は週2回の50g高濃度ビタミンC点滴 有効な場合6か月後からは週1回の50g高濃度ビタミンC点滴 |
がん・病気の予防目的の方 | 月1~2回の25g高濃度ビタミンC点滴 |
美容や美肌などのエイジングケア目的の方 | 月1~2回の25g高濃度ビタミンC点滴 |
費用(税込)
高濃度ビタミンC点滴はすべて自費治療になります。
ビタミンC 12.5g | 8,250円 |
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ビタミンC 25g | 11,000円 |
ビタミンC 50g | 16,500円 |
点滴手技料 | 1,100円/回 |
G6PD活性測定採血 | 11,000円 |
初診料 | 5,500円 |
再診料 | なし(点滴手技料に含む) |
副作用
副作用は非常に少ないと言われています。血管穿刺部位の痛み、頭痛、吐き気などの症状が起きることがありますが、点滴速度を緩徐にすることで多くは改善されます。また、稀ながら尿管結石、腎機能障害、G6PD欠損症による溶血クリーゼの報告があります。
注意事項
- G6PDという酵素が少ない方は、高濃度のビタミンC点滴を受けると溶血を起こすことがありますので、初回のみ全員に採血でG6PD活性を測定します。
- 点滴によりNa負荷となる場合があり、心不全、胸水、腹水、リンパ浮腫、脳圧亢進症状のある方は症状が悪化する可能性があり治療ができません。
- ビタミンC点滴療法中は血中濃度を維持し効果を高めるためにサプリメントによるビタミンC摂取をおすすめします。当院では医療機関専用サプリメントを取り扱っています。
- 空腹で点滴を行うと、まれに気分が悪くなることがありますので、食事を食べてからご来院ください。また、点滴中に喉が渇きますので水分摂取のために、お水やお茶などのノンカフェインの水分をお持ちください。
治療の流れについて
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ご予約
お電話か受付にて診察のご予約をお取りください。
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問診・採血
医師による問診、診察および腎機能や肝機能をチェックするための採血、G6PD活性を調べる採血を行います。がん治療の場合は、これまでのがん治療の経過や状態も併せてお聞きします。
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結果確認
約1週間後にG6PD活性の結果がでますので、採血結果に問題がなければ約1週間後からビタミンC点滴が開始できます。
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点滴
院内にてビタミンC点滴を行います。リクライニングチェアでごゆっくりお受けください。お食事やおやつをおとりになった後にご来院ください。また、点滴中は喉が渇きますのでお好きなお水やお茶をお持ちいただき、こまめに水分を摂取してください。
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会計
次回の点滴の日時を受付にてお取りいただき、お会計をしてご帰宅ください。お会計では現金のほか、各種クレジットカード、スマホ決済が使用可能です。
当院では、がん手術後の再発予防に完全オーダーメイドの自家がんワクチンをお受けいただけます。
また、丸山ワクチンの有償治験の担当医になることも可能です。