新型コロナワクチン接種後の抗体量を測定してみました。
ファイザー社製の新型コロナワクチンを接種してから約6か月が経過しました。
ワクチン接種後のコロナ感染、いわゆるブレークスルー感染が話題になる中、3回目のブースター接種も予定されているとのことです。
そこで、実際自分の現在の新型コロナウイルスに対する抗体はどれくらいあるのか調べてみました。
やはり抗体量は低下しているのか?心配になりました。
二宮医院では、検査会社BMLに外注検査として新型コロナ抗体IgG定量検査を依頼しています。
検査は、血液検査で行います。
今回は、院長と名誉院長が検査を受けました。
血液検査から5日後、結果がかえってきました。
①42歳 男性 ファイザー製ワクチン2回接種から約6か月
副反応:2回目接種時に38℃の発熱あり
結果:判定 (+) 定量値 1113.7 AU/ml
②73歳 男性 ファイザー製ワクチン2回接種から約4か月
副反応:軽度の筋肉痛
結果:判定 (+) 定量値 365.4 AU/ml
上記のように、判定は二人とも(+)でしたが、抗体量に差がありました。
接種から4か月しか経過していない73歳の抗体量の方が、6か月経過した42歳より低いという結果となりました。
2回目接種からの経過時間、副反応、年齢に差がありましたが、影響したのでしょうか?
また、この抗体量の数値はどのように判断すればよいのでしょうか?
下記にまとめてみました。
結果、抗体量は低いことが判明!!
新型コロナワクチンについて
ファイザー社やモデルナ社の新型コロナウイルスに対するワクチンは、「メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン」と呼ばれる新しい技術により作られたワクチンです。mRNAワクチンは、ウイルスの表面にある、ウイルスが人の細胞へ侵入するために必要なスパイクタンパク質と呼ばれるたんぱく質の遺伝情報を含んだものです。mRNAワクチンを接種することで人の体内にこのスパイクタンパク質の遺伝情報が入ると、免疫の働きでスパイクタンパク質に対する中和抗体(ウイルスの細胞への感染や重症化を防ぐ抗体)および細胞性免疫が誘導されることで新型コロナウイルス感染症の予防効果が期待されています。
アストラゼネカ社の新型コロナウイルスに対するワクチンは、「ウイルスベクターワクチン」であり、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質(ウイルスがヒトの細胞へ侵入するために必要なタンパク質)のアミノ酸配列をコードする遺伝子をサルアデノウイルス(風邪のウイルスであるアデノウイルスに、増殖できないよう処理が施されています。)に組み込んだ製剤です。本剤接種により遺伝子がヒトの細胞内に取り込まれると、この遺伝子を基に細胞内でウイルスのスパイクタンパク質が産生され、スパイクタンパク質に対する中和抗体産生及び細胞性免疫応答が誘導されることで、SARS-CoV-2による感染症の予防ができると考えられています。
新型コロナ抗体について
体外から体内へ侵入した異物(抗原)に対して、人の体が反応して産生される物質を抗体といいます。この抗体は免疫グロブリンと呼ばれ、構造の違いによってIgG、IgM、IgA、IgD、IgEという5つのグループに分類されます。生体は細菌やウイルスなどの抗原に対して感染した初期にはIgMを産生し、その後、遅れてIgGを産生します。IgGは、その後、長期間にわたって体内に存在し抗原に対する免疫応答を担っています。抗体の量が多いほど感染や重症化を防ぐ効果が高いとされています。
ワクチン接種後の免疫獲得を見るためにはIgG抗体(S)を測定します。
ワクチン接種によって得られる抗体の量(抗体価)は人によって差があり、ワクチン接種を受けたすべての方が感染予防に必要とされる抗体の量(抗体価)を獲得できるわけではありません。新型コロナウイルスのスパイクタンパク質に対する中和抗体の量を調べることで、ご自分が新型コロナウイルスへの免疫を獲得できたのかを知ることができます。
また、接種からの経過とともの、この抗体量は低下してくることが報告されており、新型コロナウイルスワクチン2回接種後に新型コロナに感染してしまうブレークスルー感染も、この中和抗体の量(抗体価)が関係していると言われています。
※抗体の量が多いからといって、感染を完全に防ぐことができるようになったわけではありませんので、公共のルールにのっとり、マスク等の感染予防対策の継続をお願いします。
抗体検査をおすすめする方
・新型コロナウイルスに対する中和抗体の量を調べたい方
・ワクチン接種後、しっかりと免疫(抗体)がついたか調べたい方
ワクチン接種をされた方は、2回目接種の7日以降での検査をおすすめ致します。
・ワクチン接種から時間が経過し、抗体量が低下していないか心配な方
ファイザー社・モデルナ社・アストラゼネカ社のワクチン接種後の方の検査が可能です。
検査方法
ヒト血清および血漿中のSARS-CoV2のスパイクタンパク質に対するIgG抗体を定量的に測定します。血液検査が必要です。
【試薬名】ARCHITECT SARS-CoV-2 IgG Ⅱ Quant
ARCHITECT SARS-CoV-2 IgG II Quant(Abbott社)は、欧州での使用を可能とするCEマーク、米国ではFDAの緊急使用許可(FDA-EUA)を得ており、感度99.35%、特異度99.6%と報告されています。したがって、数あるスパイクタンパク抗体検査の中でも、過去感染やワクチン接種後の抗体価を確認する上で、特に信頼できる検査であると考えられます。
結果はいつ
BML社への外注検査のため、結果は3~5日後です。
検査の受け方
診療時間内に受付までお越しください。
絶食の必要はありません。
<診療時間>
(平日) 9:00〜12:00/17:00〜19:00
(土) 9:00〜13:00
検査費用について
新型コロナウイルスへの中和抗体の量IgGを測定する検査は、自費診療となります。
1回の検査につき6,600円(税込)となります。
結果の解釈について
実際にヒトでの中和抗体量と臨床結果(感染や重症化の予防)との関係性を明確に表したデータはありません。しかし、時間経過とともに低下していくことはわかっています。また、2回ワクチンを接種しても抗体価が上昇しない人がいることも分かっています。
欧米の研究では、ファイザー社のワクチン接種後の抗体価は、1回目の接種後の中央値 2,217 AU/mL, 2回目の接種後の中央値 6,396 AU/mL であったと報告されています。
また、長崎大学より発表された日本人を対象とした研究では、ファイザー社のワクチン接種後の抗体価について、1 回接種後14 日の中央値は約1,000AU/mL、2 回接種後7 日の中央値は約22,000AU/mLと報告されています。
下記は培養実験レベルでのデータですので参考程度に
ウイルス量を50% まで減少させることを確認する培養細胞での試験(プラーク減少中和試験(PRNT))で、1:250 希釈のPRNT ID50(代表的な高力価の指標)を使用した確率プロファイルの例では95%信頼区間で4,160 AU/mLと報告されています。4,160 AU/mL以上あれば高力価と判断できますが、それ未満でも中和活性は有していると考えられます。
ご自身の中和抗体がいつまで保持されているのか気になる方は定期的な検査をお勧めします。
注意事項
*中和抗体が高ければ新型コロナウイルスに感染しないことを保証するものではありません。
*当院での抗体価は、他検査機関での検査データと比較できない可能性があります。同じ検査試薬・方法・検査機関のデータであることを確認してから比較してください。
*我々は、抗体を介した「液性免疫」とは別に、抗体を介さずに免疫細胞自体がウイルスを攻撃する「細胞性免疫」という免疫機能を持っています。したがって、「液性免疫」にのみ関与する抗体の量だけでは感染予防効果のすべてを知ることはできません。
ご興味がある方は二宮医院まで